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ノンフィクション・人文
縄文 革命とナショナリズム
価格 |
3,300円 |
---|---|
判型 |
四六判 |
ページ数 |
(予定)432ページ |
ISBNコード |
9784778319724 |
2025.6.24 |
書籍の説明
戦後日本は何につまずき、いかなる願望を「縄文」に投影したのか。
岡本太郎が縄文を発見し、思想家、芸術家たちのなかで縄文への関心が高まった。柳宗悦ら民芸運動の巨匠たちが縄文に本当の美を見いだし、島尾敏雄が天皇以前の原日本人の姿を託し、吉本隆明を南島論へと向かわせた。縄文は日本赤軍のイデオロギーにも取り込まれ、オカルトを経由しニューエイジ、スピリチュアリズムに至る。梅原猛が霊的世界を称揚する縄文論を展開し、「縄文ナショナリズム」を生み出すことになった。それは、1990年代の右傾化現象のなかでさらに裾野を広げている。
戦後日本人の新たな精神史。
序章 戦後日本が「縄文」に見ようとしたもの
第一章 岡本太郎と「日本の伝統」
縄文発見
対極主義と「日本の伝統」
第二章 民芸運動とイノセント・ワールド
民芸運動と「原始工芸」
濱田庄司の縄文土器づくり
最後の柳宗悦
第三章 南島とヤポネシア
島尾敏雄の「ヤポネシア」論
吉本隆明『共同幻想論』と「異族の論理」
「ヤポネシア」と縄文
第四章 オカルトとヒッピー
空飛ぶ円盤と宇宙考古学
原始に帰れ!——ヒッピーとコミューン
第五章 偽史のポリティクス——太田竜の軌跡
偽史と革命
辺境への退却
スピリチュアリティ・陰謀論・ナショナリズム
第六章 新京都学派の深層文化論——上山春平と梅原猛
上山春平と照葉樹林文化論
梅原猛——縄文とアイヌ
終章 縄文スピリチュアルと右派ナショナリズム
2025年6月26日(木)発売
予価:3000円+税
目次
序章 戦後日本が「縄文」に見ようとしたもの
火起こし器に魅了される/線刻壁画と死者の世界/プリミティブへの憧憬——ルソーにおける「透明」と「障害」/縄文をめぐる戦後精神史へ
第一章 岡本太郎と「日本の伝統」
縄文発見
日本とは何か/国立博物館「日本古代文化展」/一九五一年十一月七日/日本の伝統とは何か/縄文vs弥生/縄文土器——「アシンメトリー」と「不調和のバランス」/「四次元的性格」/掲載された写真
対極主義と「日本の伝統」
闘いとしての芸術/人類博物館とマルセル・モース/バタイユとコジェーヴ/日本の「伝統」への失望と「対極主義」/縄文土器に見出したもの/縄文土器論の加筆/秋田の「なまはげ」——原始宗教の現われ/花巻の鹿踊り/民藝運動への懐疑
第二章 民芸運動とイノセント・ワールド
民芸運動と「原始工芸」
東京高等工業学校窯業科/図案家・杉山寿栄男と「原始文様」/芹沢銈介と芹沢長介/ 日本民芸館での「アイヌ民芸品大展観」
濱田庄司の縄文土器づくり
藤森栄一と白崎俊次/濱田庄司への依頼/縄文人は「日本の民芸の先祖」/古代土器複 製標本がもたらしたもの
最後の柳宗悦
イノセント・ワールド/古丹波の「灰被」/岩偶/「美の浄土」としての縄文
第三章 南島とヤポネシア
島尾敏雄の「ヤポネシア」論
南島論の興隆/大東亜戦争と南島経験/「治癒」と「救魂」/「ヤポネシア」論/古代 の生活が息づく南島
吉本隆明『共同幻想論』と「異族の論理」
吉本隆明『共同幻想論』/島尾敏夫×吉本隆明/「異族の論理」
「ヤポネシア」と縄文
谷川健一「<ヤポネシア>とは何か」/島尾敏雄の苦悩/縄文へ/縄文という「反体制的異端のバイタリティ」/「未来の縄文」
第四章 オカルトとヒッピー
空飛ぶ円盤と宇宙考古学
カウンターカルチャー/宇宙人との会見/超古代史へ/日本空飛ぶ円盤研究会と三島由紀夫/CBA(宇宙友好協会)と地球の危機/「古代宇宙人来訪説」と「宇宙考古学」/古代に現れた「太陽円盤」/古代太陽王国vs天皇/遮光器土偶は宇宙服を着ている/手塚治虫『勇者ダン』と「宇宙考古学」/北海道でのピラミッド建設
原始に帰れ!——ヒッピーとコミューン
ヒッピーの誕生/新宿・風月堂/「われわれはいまだ知られざる文明の原始人である」 /部族と原始コミューン/「原始に帰れ」/コミューンの行き詰まり/列島改造論と南島/奄美大島の無我利道場/「原子化」から「原始化」へ
第五章 偽史のポリティクス——太田竜の軌跡
偽史と革命
華青闘告発/八切止夫の原住民史観/『日本原住民史』の出版/梅内恒夫「共産主義者 同盟赤軍派より日帝打倒を志すすべての人々へ」/八切史観からの影響とズレ/三人の世界革命浪人(ゲバリスタ)へ
辺境への退却
スターリンへの懐疑とトロツキーへの共感/辺境の最深部へ/そして、原始へ/日本帝 国主義の打倒/世界革命浪人(ゲバリスタ)と「反日本」/アイヌへの接近/「アイヌ革命論」と八切史観/梅内論文への応答/第二十六回日本人類学・民族学連合大会への乱入/シャクシャイン像台座削り取り事件から北海道連続テロ事件へ
スピリチュアリティ・陰謀論・ナショナリズム
体調不良と「自然観の革命」/自然食=マクロビオティックへの傾倒/「原始の食」を取り戻す/桜沢如一の皇国主義をどう超えるか/再び日本原住民論へ/権藤成卿の「社稷」/UFO製作と一神教批判/日本人の使命と宇宙計画/家畜全廃論とエコロジー運動/ユダヤ陰謀論・縄文回帰・国粋主義/「縄文スメラミコト皇統」
第六章 新京都学派の深層文化論——上山春平と梅原猛
上山春平と照葉樹林文化論
今西錦司の共同研究グループ/中尾佐助「照葉樹林文化論」の誕生/発想の元となった マナスル登山隊偵察隊/上山春平が探究した「日本文化の深層」/「山岳的」で「山棲み的」な日本文化/柳田國男と江上波夫への批判/盟友・梅原猛との対話
梅原猛——縄文とアイヌ
梅原日本学/「民族の基本的精神」/北海道へ/藤村久孝との出会い/金田一京助とい う壁/大野晋との対決——古代日本とアイヌ語/埴原和郎との出会い/東北への旅/呪術と精霊/「縄魂弥才」の日本/中曽根康弘首相との蜜月/「蘇る縄文」——狩猟採集文化の先進性/日本の精神が新しい世界の原理となる/国際日本文化研究センターへの批判/梅原日本学は国粋主義か/「森の思想」とエコロジー
終章 縄文スピリチュアルと右派ナショナリズム
「縄文」vs「弥生」/縄文左派——<天皇の超克>と<魂の救済>/一九八〇年代——精神世界とナショナリズム/西尾幹二『国民の歴史』と新しい歴史教科書をつくる会/スピリチュアルなナショナリズム
あとがき
参考文献
著者プロフィール
中島岳志(なかじま・たけし)
1975年大阪府生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ヒンディー語専攻卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了、博士(地域研究)。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現職。専門は南アジア地域研究、日本思想史、政治学、歴史学。2005年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞受賞。同年、『ナショナリズムと宗教』(春風社)日本南アジア学会賞受賞。主な著書に『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』(2011年、朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(2013年、新潮社)、『血盟団事件』(2013年、文藝春秋)、『アジア主義 その先の近代へ』(2014年、潮出版社)、『親鸞と日本主義』(2017年、新潮選書)、『保守と大東亜戦争』(2018年、集英社新書)、『保守と立憲 世界によって私が変えられないために』(2018年、スタンド・ブックス)、『自民党 価値とリスクのマトリクス』(2019年、スタンド・ブックス)『思いがけず利他』(2021年、ミシマ社)など多数。