『ケトルVOL.52』(スティーヴン・キング特集/太田出版)
『ケトルVOL.52』(スティーヴン・キング特集/太田出版)
映画・演劇・ドラマ

名匠ロブ・ライナー監督が『スタンド・バイ・ミー』で見つけた“自分のスタイル”

Amazonより
『ケトル VOL.52』 ケヴィン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー、曽我部恵一、栗原類、武田砂鉄、永嶋俊一郎…ほか

スティーヴン・キングはモダン・ホラーの第一人者として知られていますが、ホラー以外でも数々の名作を生み出しており、その代表的な作品が『スタンド・バイ・ミー』。4人の少年が死体探しの旅に出かける小さな冒険旅行を描いた同作は、1986年に映画化されて大ヒットしました。

『スタンド・バイ・ミー』公開時、「これはキングの自伝で、彼の解釈をするうちに私自身の精神的自伝になった」(『キネマ旬報 1987年5月下旬号』より)と語ったのが、監督のロブ・ライナー。今ではライナー監督の初期の代表作とされている同作ですが、当初は「何にフォーカスすべきかわからず、パニックに陥った」と振り返っています。

脚本は4人の少年たちが死体探しに行く過程をシンプルに描いた、原作に忠実な脚色となっていました。しかし、あまりにストレートな物語であったため、この4人の誰に、どんな要素にフォーカスして映画化すべきか。まだ監督としてのキャリアが浅かった彼(前2作はコメディで、ドラマの監督は初)はすっかり悩んでしまったのです。

そこでロブ・ライナーが注目したのは、原作の語り部であり、将来小説家になるゴードン少年でした。この人物を通して、キングは自分のことを語っているのではないか? そう考えたライナーは死体探しの旅を「ありふれた夏の日の思い出ではなく、重要な人生のターニングポイント」として描くことに決めます。

実際、少年たちの劇中の会話をよく聞くと、その後の人生を暗示させる言葉がところどころにちりばめられていることに気が付くはずです。キングは原作のどこまでが自分の身にあったことなのか明言していませんが、試写を鑑賞した際は感動のあまりしばらく言葉が発せず、後に「私の作品の映画化でベストだ」と称賛しています。

そして、実は同作はロブ・ライナーにとっても人生を見つめ直す契機になりました。彼の父親は著名な映画監督であり俳優で、ライナーはずっと父親の名声に負けないように張り合っていました。もともとコメディ作品ばかり手掛けていたのも、人気コメディアンだった父親へのライバル心から。しかし、キングの原作と格闘しながら『スタンド・バイ・ミー』を映画化する過程で、ライナーは初めて自分なりの演出スタイルを見出し、父親を意識せずに“自分らしい映画”を作ることができたと語っています。同作は監督自身にとっても人生のターニングポイントとなったのです。

子役たちの演技が高く評価された『スタンド・バイ・ミー』により、ライナーは演技指導に優れた監督としての評価を確立。キング原作の『ミザリー』では、舞台を中心に活躍していたキャシー・ベイツを抜擢し、彼女にアカデミー賞主演女優賞をもたらしました。

◆ケトルVOL.52(2020年2月16日発売)

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