INTERVIEW FILE 021 西田一生
Apr 30, 2019

INTERVIEW FILE 021 西田一生 (振付師)

これまた突如復刊「槙田紗子のマキタジャーナル」! 槙田紗子が心から敬愛する皆さんにインタビューする本企画ですが、今回は振付師の西Pこと、西田一生さんがご登場くださいました。もはやレジェンド級の振付師として数々の実績を残す西田さんに、槙田さんも、学ぶところが多かった模様です。もはや取材なのか!?っていうくらいに西田さんの話に聞き入る槙田紗子をご覧ください。

文=槙田紗子 編集=原カントくん 撮影=川村将貴
INTERVIEW FILE 021 西田一生 写真1
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西田 浮かばないときはしんどいよね。

槙田  浮かばないときとかありますか?

西田 しょっちゅうあるよ。だから自分の中のボーダーライン、これより低いものは絶対世に出さないみたいな、自分の中の基準があって、例えば自分の中で80点がボーダーラインだとしたら、90点だろうが100点だろうが80点より上だったら自信を持ってお出ししますみたいな、そういうふうに決めてる。毎回100点のものは絶対出せないし、毎回そこを目指したてら多分作ってて辛くなって、ワーってなっちゃうと思う。時間があったらもっと悩みたかったって思うこともあるけど、それを言ったら、やっぱり締め切りに間に合わなくなっちゃうし、職業的にたくさんのものを作らなければいけないと思うので、こだわってられないっていう。

槙田  もう泣きそうなぐらい、今響いてます。多分それができてないんで、今。すごい仕事が詰まってる時期とかパニックだし、逆に舞台の振り付けとかだと長期間かけて作るから、いくらでも直せちゃう面があって、そうすると、こっちもいいかも、これもいいかも、あれ?って。何が良くて何が微妙なのかもはや分からなくなってきて、結局、モヤモヤして終わったりとか。

西田 意外と直感で一番最初に作った振りがよかったりしない?

槙田  はい、あります。振り作るときって、曲聴き込みますか?

西田 もちろん。作曲家と作詞家の意図は結構、できるだけ探るようにはしてるかな。

槙田  結構聴いて、最初に体を動かして作りますか。

西田 ううん。

槙田  頭で。

西田 先に構成かな。Aメロ、Bメロ、サビそれぞれで何が起こるかっていう。あと、大人数のチームのところだと、先に立ち位置表を書いちゃう。

槙田  そこから振りを付けていくんですか。

西田 先にステージ上で何が起こってるかを決めて、この絵を作りたいからこの振り付けが必要っていう作り方。
 例えば、Bメロが狭いフォーメーションで、サビで広げるって決めたら、Bメロでわざと内面に入るような振りを作っておいて、サビで立ち位置が広がるってことは、開放感が欲しいんだなって分かるから、開放感のある振りをサビで持ってこようっていう。だから歌割りが後からくるレコード会社とかだと、あーってなる。

槙田  そうですよね。

西田 だから絶対、制作の人たちには、メロとオケ、メロと歌詞と歌割りをもらう。あとは、PASSPO☆さんとかもあったと思うけど、その曲で誰がセンターにいてほしいとか、チームの中でリーダー格の人がいて、この人には基本前のほうにいてほしいとか、そういう条件を先に聞かないと作れない。

槙田  西田さんの振付を色々と見させていただいて、勝手ながら私が受けた印象が、シンプルでキャッチーで、すごく分かりやすくて面白いっていうのはもちろんなんですけど、余白をすごく感じたっていうか。

西田 おお!

槙田  余白があるんだけど無駄がないっていうのをすごく感じて、でもそれって演者に委ねる部分が結構あるんじゃないのかなと思ったんですよ。表現力で補わなきゃいけないというか、移動しているだけの時間が一番難しかったりするじゃないですか、演者的には。それを、ステージに立っている人たちに託す力というか、それがすごいなって個人的に思ったんですよ。信じて渡しているからこその振付だなって。結構アイドルとかアーティストさんによっては、慣れていない新人の子とかだと、歩いて移動する部分もただ歩いてるだけになっちゃう子とかいるし、自分が付けた振付こういうのじゃなかったよな?って思う瞬間もあるじゃないですか。その辺りの指導とかって、どうされてるんですか?

西田 余白の話とタレントさんの個性を引き出すことって結構直結してて、例えば10人ぐらいのタレントさんが一緒に踊るってなったときに、ものの考え方で良し悪しはあるんだけど、自分は個性があってでこぼこしてたほうが嬉しいタイプなのね。いわゆる軍隊のように寸分の狂いなく統率が取れたダンスも、シンクロ度がすごいとか、きっちり揃えることの面白さみたいなのがあったりして、それはダンサーさんとか、ダンスを売りにしてる人たちがやるのは良いことだと思う。
 だけど、タレントさんやアイドルには1人ずつにそれぞれのファンが付いてほしいと思ってるし、ファンの人は疑似恋愛をしてほしいと思うから、あの人可愛いよねとか、あの人タイプなんだけどとかって思いながら見てほしくて。似た人が10人いたら、それは面白くない。かわいい子もいる、かっこいい子もいる、ちょっとセクシーな子もいる、ちょっととぼけた子もいるみたいな、分かれてる方が面白くて、それを見せようと思ったら、余白が必要になってくるのよ。

槙田  なるほど!

西田 だから、タレントさんの個性も消さない、でもダンスは踊りたい、じゃあバランスを整えようってなったら、必要なところだけダンスをつけて、それ以外はその人たちの素が出るようにわざと持ってくるとか。ダンスが難しいと、踊ることに精神を集中させてしまって、個性を出す暇もないって自分が演者だったら思うと思うんです。余裕があるダンスだと、自分らしくできたりとか、ここでキメ顔の一つでも入れてみようかなとか思える隙間がある。
結果、そのチームをパッと見たときに、似たような子がいっぱいいるねっていうチームになるのか、色んな子がいるねっていうチームなるのかっていう演出を、振付師側が誘導できるっていう。

槙田  見てる人も色んな楽しみ方ができますもんね。

西田 もちろんダンスが売りのチームはそれをやっちゃ駄目だから、ちゃんとダンスに突っ込んで行かなきゃいけないと思うんだけど、タレントさんの個性を見せたい場合は、ちゃんと引き算を、ビビらずにしたほうがいいかな。

槙田  そう、引き算ですよね。。。すごい勉強になる。これただの、私のためのアドバイスいただいてるだけで、読んでる人は果たしてこの内容分かるのかなっていう(笑)。振りを1曲作るのにどれくらい時間かかりますか?

西田 一晩で2、3曲っていうのもあるから。

槙田  以前Twitterに1日で6曲作ったって書かれてましたよね。ビックリしました。

西田 その日はやたら多かったの。あまりにも多くて、面白いからつぶやいてやろうと思って。

槙田  いや、そんなことあり得るんだと思いました。すごすぎます。

西田 いろんなものがあるからね。アニソン系のお仕事とかは、踊るのが声優さんだったりするから、簡単な振りで、サビしか踊らないとかね。そういうのは1時間もあれば作れちゃう。