INTERVIEW FILE 021 西田一生
Apr 30, 2019

INTERVIEW FILE 021 西田一生 (振付師)

これまた突如復刊「槙田紗子のマキタジャーナル」! 槙田紗子が心から敬愛する皆さんにインタビューする本企画ですが、今回は振付師の西Pこと、西田一生さんがご登場くださいました。もはやレジェンド級の振付師として数々の実績を残す西田さんに、槙田さんも、学ぶところが多かった模様です。もはや取材なのか!?っていうくらいに西田さんの話に聞き入る槙田紗子をご覧ください。

文=槙田紗子 編集=原カントくん 撮影=川村将貴

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槙田  結構メジャーなグループたくさんやられてると思うんですけど、オファーが来たら、結構何でもやりますっていうスタイルですか?

西田 うん。アイドルは比較的、自分の振付歴の中では結構最近なんですよ。6年、7年ぐらいかな。アイドルで一番最初にやったのがBuono!かな。

槙田  ロッタラとか!

西田 そうそう。その後渡り廊下走り隊。で、その2組やった後、急激にブワーっと依頼が来始めて、アイドルの先生みたいなイメージになってしまった。でもその前は、クレイジーケンバンドとか、ウルフルズとか、サンボマスターとか、氣志團とかの振付に関わらせてもらってたから、どっちかというとロックバンド寄りの仕事が多くて、アイドルはほとんどやってなかったですね。

槙田  アイドルカレッジのメンバーとこの間会ったとき、今度西田さんにお会いするんだよねって話をしたら、「振り入れがめちゃくちゃ速かった!」って言ってました。振り入れがすぐ終わって、後半は振りの説明をしてくれたって言ってて、そうなんだと思いました。

西田 振りを難しくしないんだよね。アイドルさんの場合はね。ダンサーの場合は別だけど、アイドルの場合はやっぱり余裕を持って踊ってほしい。だから、何回か振りを見せて一緒にやれば、すぐ踊れちゃうような内容だから。それよりも、なんでこうしたかとか、ここに実は仕掛けがあるんだっていう話をする。このサビを素敵に見せるためにBメロわざとこうしたんだみたいな話とか、からくりの説明のほうが長いかも。

槙田  入れる時間は2時間ぐらいですか?

西田 そうね。1、2時間で。

槙田  速い 。

西田 自分の理想、目標としては、西城秀樹さんのYMCAって分かりますか? あれが自分のとって振付の最高峰なんですよ。
 すごく難易度が高いダンスが素敵っていう人もいるし、ゴージャスで派手なダンスが素敵っていう人もいるだろうけど、自分の中では、国民の何割が踊れるかみたいな、そっちのほうが大事。例えばEXILEさんや安室奈美恵さんの振り付けを国民の何割が踊れますかっていうと、だいぶ低いと思う。じゃあ、YMCAのサビのあの一部分だけで国民の何割の人が踊れますかって言ったら、おじいちゃん、おばあちゃん、今の小学生とかも知ってるから、自分の予想だけど多分7割、8割はいくんじゃないかな。

槙田  確かに。

西田 あの振りを見たときに、その振り知ってるよ、西城秀樹さんのあの曲でしょう?っていう認知度で言うと、ダントツ1位のような気がしてて、そういうのがかっこいいと思うタイプで。日本中が踊れんだぜって思ったら、うらやましい!ああいうの作りたい!って思う。その価値観でいくと、がっつり踊ることは全然自分にとって得策ではなくて、いかに一般の人たちに広く普及するかを考えるんだよね。

槙田  でもやっぱり、自分の中でこれがかっこいいってものがあると、筋が通るというか。

西田 どこに憧れてるかとか、結構大事かも。ダンサーさんは、スキルの高いものとか難易度の高いものに憧れるから、そっち行きがちなんだけど、自分の場合は西条秀樹のYMCAに憧れてるから、どうやって簡単にしようとか、どうやったらおじいちゃん、おばあちゃんからちっちゃい子までが踊れるものを作れるんだろうって思うから。例えば有名なのだと、Winkさんの『Heart On Wave』とか、工藤静香さんの『嵐の素顔』とか見ると、ああ!ああいうのやりたい!悔しい!と思う。

槙田  そういうのも、さっきおっしゃってた、パッと最初に浮かんだものが一番よかったりするっていうことなんですかね。

西田 結構直感が大事かな。

槙田  もう、YMCAなんてアルフベットまんまやってるだけやんって話ですもんね。

西田 YMCAすごくないですか?

槙田  今もCMでやってますもんね。

西田 40年ぐらい前の踊りが、いまだに日本国民のほとんどの人が知ってるって驚異的なことだと思う。

槙田  本当ですよね。あの、振付師のポジションと年齢ってどれくらい関係してくると思いますか?なんか年齢コンプレックスみたいなのがちょっとあって、単純にキャリアがまだ短いっていうのもあるんですけど、振りを入れるだけじゃなくて、人に教えるとも捉えられるようなことをやっているときに、私の場合、アイドルでも同い年とかいるんですよ。やっぱり、私が30代ぐらいになったらもうちょっとやりやすいのかなとか、たまに思うんですよね。

西田 うん、そうだと思う。例えば番組プロデューサーとか、映像監督とか、振付師とか、現場で人を仕切る人が若造だとちょっとなめられるかなとは思う。

槙田  そうですよね。だから、なめられないようにしようっていうのをすごい意識しているんですけど、特に映像の現場とかで振付すると、すごい緊張するっていうか、若いってだけで、「え、この人先生なんだ。」みたいになるし、そこでちゃんとできなかったら、やっぱ若いからって思われちゃうし。直接アイドルに教えるときでも、ふと冷静になってしまうときがあるんです。私、別にみんなとそんなに年も変わらないけどな?みたいな。今は、普通のダンスレッスンとか結構やるんですよ。事務所に頼まれて。そういう振付以外の仕事のときはなおさら思いますね。

西田 自分がアドバイスするとしたら、元アイドルが教えるわけだから、ダンスのスキル習うんだったらダンサーに習えばいいわけで、やっぱり可愛く見せるノウハウを教えてくれるダンスっていうのがいいんじゃないかな。元アイドルで、私はこうしたらお客さんが喜んでくれましたよ、こうするとお客さんから反応が返ってきやすいですよとか。じゃあ、同じ振付をノウハウなしで踊るのと、ノウハウありで踊るのでどれだけ差が出るか実験してみましょうとかね。そういう教え方が出来たら、普通のダンサーができることじゃないから、僕はビジネスチャンスだと思う。

槙田  面白い!自分にしかできないことをしないとってことですよね。西田さんは『おっさん史上最強カワイイ振付師』というキャッチコピーがありますが、振付師も、そういうオリジナリティやキャラクターは大事なんですかね。

西田 やっぱり振付師を目指してる人はダンスの業界に沢山いて、その人達はみんなお仕事を欲しがってるわけじゃないですか。お仕事が欲しいから、とりあえず安い値段でもいいから頑張ります、タダでもいいからキャリアをくださいって人たちがいっぱいいる。自分も駆け出しの頃値段関係なくどんどんやったし。でもだからこそ、そこそこ良いダンスを作れて、安い値段でもいいからチャンスくださいってメラメラしてる若いダンサーや振付師いっぱいる。そうすると、その子たちと同じことやると、自分の値段は下がると思って。その子たちが出来ないこと、作れないものは何だろうなって、悩んだから。
 野菜が天気が良くていっぱい取れると野菜の値段が下がって、不作だと野菜の値段が上がる。僕は、じゃあ競争率が低いところを狙えばいいでしょ?っていう発想の人なんですよ。だから、かっこいいダンスはみんながやりたいと思ってるから、そっちは人口が多いだろう、じゃああえて、お仕事の数はあるけど人口が少ないとこを狙おうって思ったら、今のスタイルになっちゃった。

槙田  考え方が、ザ・経営者って感じなんですね。

西田 そうかも。何年か前に、猫ひろしさんがオリンピックにマラソンで出られたじゃないですか。日本はすごくマラソン人口が多くて、レベルも高いから、あえてマラソンのレベルが低い国に国籍を移して、その国の選手としてオリンピックに出た。メダル取ったかっていうと、そうではなかったけれども、猫さんの目的としてはオリンピックに出たいんだと。出ることが目的なんだっていうことに関しては、叶ってるわけじゃないですか。それを見たときに、かっこいい!!と思って。あの年齢でオリンピックに出たい、それが夢で、ちょっとずるい方法かもしれないけども、国籍を変えて、マラソンが盛んじゃない国に行って、実際に出ちゃったわけですよ。かなり最後尾辺りでゴールされたっていう話は聞いたんですけど、出るっていう目的は果たしてるわけで。自分は長くこの業界にいたいと思ったから、自分も競争率が低いところを狙ってちゃんとできたらいいなって。

槙田  確かに。猫ひろしさんすごいですよね。本当にやっちゃうことが、やっぱりすごいんですよね。

西田 そうそう。あれは心からかっこいいと思った。それでメダルとか取ったらもっとかっこいいんだろうけど、でも、ちょっと一歩下がって、あの年齢の人がオリンピック出たくて出ちゃったっていうことはスゲーと思って、考え方なんだろうね。一歩下がることで視野が広まったりとか。
色んな経営者の方とかと話をすると、ホームランを1本打つのか、ヒットを100本打つのかどっち?みたいな話が出たりするんだけど、自分は多分ホームランは狙ってなくて、ヒットをいっぱい打ちたい方なんだろうなと思う。

槙田  何か目標を下げても、当たってほしいみたいな。

西田 そうそう。確実に前へ行くぞみたいなのが、あるのかもしれない。

槙田  そのために何か小さなこだわりとかを捨てることって、誰もができることじゃないからすごい思うんですよね。私は、結構しょうもないこだわりとかを捨てれないタイプなんで、絶対にこれは譲れないみたいなのが強すぎちゃって、緩さがないというか。だから、振りも結構詰めちゃう癖があって、最近は引き算出来るようにはなりましたけど、昔作った振りとか見ると、やりすぎ!音取りすぎ!みたいな。そういう性格なんですよね。

西田 ゴールを変えればいいんだと思う。本当は振りを足したいのに削らなきゃって思うと辛いでしょ。

槙田  はい。

西田 でも削るほうが難しいけどね。

槙田  長くなっちゃったんですけど、最後に、これからやりたいことがあったら教えてください。

西田 なんとなく、この10年、15年ぐらいかな、SPEEDさんとか安室奈美恵さんとかがウケ始めて以降、ずっとダンスブームっていうのがなんとなく続いてて、でもそれもなんとなく下火になったかなと思っていて、次何がくるんだろうと考えたときに、自分は、歌詞とか世界観を重視したものがくるんじゃないかなと思ってて。例えば欅坂46さんとかもそうだけど、世界観とか歌詞を大事にした演出とか、そういったショーアップが今後すごく重要になるんじゃないかなって。そう考えると、ダンサーが作るダンスっていうよりも、役者さんが作るダンスみたいなものが作れたらいいなと思って、そうすると演技のこととかもしっかり勉強したいなと思ったりとかね。自分で作詞の勉強してもみたいなとか、書くわけじゃないけど、ちゃんと読み込んで、作詞家さんが何考えてるか理解してる振付師になりたいなって思ってる、今は。

槙田  いつか、ご一緒できるように頑張ります!

西田 なんか一緒にやろうよ。

槙田  是非!アシスタントとしても呼んでください!

西田 本当に?一緒に現場行く?

槙田  私でよければ。全然振り作りとか、お手伝いできることがあったら。

西田 じゃあさ、現場に一緒に行く企画とか。

槙田  やりましょう!カメラが入っていい現場で。

西田 そうだね。

槙田  私が、西田さんを知る前から普通に見てた曲が、あ、これ西田さん振付なんだ、あ、これも!これも!?みたいな。なので本当にお話聞けて嬉しかったです。
ありがとうごいざいました!
 
西田 ありがとうございました!

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