INTERVIEW FILE 023 枝優花
May 30, 2020

INTERVIEW FILE 023 枝優花 (映画監督)

自粛期間中にインスタライブで行われた、映画監督・枝優花さんとの公開マキタジャーナル。せっせと、槙田紗子さんが原稿にまとめてくださいました!2020年のある5月の日の記録としても、是非、お楽しみください。 ここから新しいこと、始めていきましょう!

編集=原利彦 文=槙田紗子
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真1
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真2
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真3
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真4

自粛期間でミスチルが、YouTubeでMVをたくさん配信してくれたりして、それを見返したときに、私はこの人たちが今の私の年齢ぐらいのとき作った曲が特に好きなんだなと思って。例えばこの『HOME』っていうアルバムもすごく好きです。これはだいぶ丸くなって優しい歌が多いけど、それまでのアルバムってとんでもなく尖ってるんですよ。社会に対してめちゃくちゃ怒ってて。

槙田 あんまりそういうイメージないなあ。

みんなから受け入れられやすいいい感じの曲も多いけどね。あとは、『深海』ってアルバムもすごい好きで、桜井さんが社会での立ち位置においてとても切迫している時に作ったアルバムなんですけど、地の果てまで落ちているような歌が多くて。小さい頃はそんなこと全く分からずに聴いてたけど、分かんないなりに印象に残ってるフレーズとかはあって。自分が大人になって、考え方とかがその頃の桜井さんが書いた歌詞にすごく近いなってことをこないだ発見した。ちゃんと影響を受けてるんだと思って。

槙田 なるほど。私、ミスチル全然詳しくないんだけど、枝ちゃんがたまにインスタのストーリーズとかに歌詞を載せてるの見て、ミスチルってこういう感じなんだ!って結構びっくりしてる。

そう。これは割と最近の歌ですけど、『掌』っていう歌があって。今の時期はどうか分かんないけど、皆が一丸となって頑張りましょう!みたいな空気が私はあまり得意じゃないんですよ。別に個々で頑張ればいいし、お互い個が違うんだから、その違う個を認め合える空気がもっとできればいいのにって常々思っていて。最近、自分がこうだからみんなもそう思ってるって思い込んでる人が多い気がする。LGBTと自分らが違うとかそういうことじゃなくて、異性愛同士もそれぞれが違うし。その『掌』っていう歌の内容が、一つにならなくていいから、個の存在を認め合えればそれでいいじゃんっていう歌で。本当にそうだなと。十何年前に既に言ってると思って。

槙田 すごいね。

映画でいうと、全部は用意できなかったんですが、今年アカデミー賞を取ったポン・ジュノが出てる『母なる証明』とかね。これは本当にめちゃくちゃ影響を受けています。

あと、本当に一番最初に影響を受けた映画は『A.I.』です。

槙田 そうなんだ!

Netflixとかで見れるから、是非見てほしいんですけど。子どもが病気になっちゃったから、代わりに子どものロボットをお母さんが買うんだけど、結局途中で本当の子どもが病気から復活して、ロボットの彼が要らなくなっちゃうんですよ。で、彼はお母さんに愛してほしいっていう気持ちが残ってるんだけど、本当の子どもにとって偽物の子どもは邪魔だから、山に捨てられちゃうんですね。そこから彼がお母さんを探す旅に出るっていう結構残酷な映画なんだけど。これを6歳のときに劇場で観て。

槙田 劇場で観たんだ。

そう、劇場で見て、衝撃を受け過ぎて1週間眠れなくなってしまって。この映画は、すごく嫌な言い方をすると、駄目なものは駄目っていう映画なんですよ。全員が幸せにはなれず、誰かの不幸の上に誰かの幸福が成り立ってるというか。そういう社会の縮図が描かれててですね。多分、これにすごく影響を受けてる。

槙田 すごいね。私、記憶にないよ『A.I.』。子どものときに観たけど。

よっぽどびっくりしたんだろうね(笑)。あとはこれ。『牯嶺街少年殺人事件』です。

槙田 それ、めっちゃ長いやつだっけ。

4時間ぐらいあるのかな。長過ぎて説明ができないんだけど、とある大事なシーンが大好きで。主人公にとって苦しいシーンなんですけど、それをめちゃめちゃ引きのショットで撮っていて、それを観たときに、やっぱり自分のことは自分でしか救えないし、他人が何かをしたところで彼を救うことができないんだってことをすごく痛感させられて。それがすごく印象に残っていて、『少女邂逅』はそういうのを生かしてます。だから、主人公が苦しいときは結構、引きの画で撮ってたりとか、そういう面でも影響を受けています。あとは、『世界の中心で愛を叫ぶ』も好きです。セカチューは撮影監督の篠田昇さんが大好きです。岩井俊二監督の作品をずっと撮ってる方で、ショットが好きで何回も見返したりとか。

そうですね、私は岩井さんがすごく好きですね。

槙田 SWICHの岩井俊二特集。若いね。

そう、1997年。これはすごい読んでます。映画はそんな感じで、本は安部公房がすごく好きです。

槙田 『砂の女』。

いつもちょっとSFっぽい感じなんです。そういう話がすごい好きで。何だろう、全部がリアルじゃない話が好きなんで、安部公房にはすごい影響を受けています。そんな感じです。

槙田 すごい。たくさんありがとう。

家であるものでやったら、こんな感じになっちゃった。

槙田 でも、全部がリアルじゃないっていうのは、枝ちゃんの作品でめちゃくちゃ感じる。実在しないものが必ず出てくるじゃん。なんだけど、登場人物のお芝居はめっちゃ自然体。あまりセリフっぽくしゃべらないというか、そこの対比がすごく面白い。

そうだね、自分が影響受けてるのは、SFだったり、作品の中で世界観が確立してるものが多いかもしれない。
槙田 すごい。さっきから共感のコメントがたくさん来てるよ。

あ、本当だ。ボレロいいですよね。ミスチルみんな好きなんですね、わかります、私もです。

槙田 でも、『少女邂逅』で、枝ちゃんの環境だいぶ変わったんじゃないかなって思ってて。私、枝ちゃんが『少女邂逅』を撮る前に、新大久保でチーズダッカルビ食べながら、こういう映画をずっと前から撮りたいと思ってて、ようやく撮れそうなんだよね!って話してくれたのを覚えてて。

そうだったっけ。

槙田 普通に食べながら飲みながらいつも通りなんだけど、話してる作品のイメージが明確すぎて圧倒されたんだよね。

記憶が、、、

槙田 そしたら、なんかすごいことになっちゃって。『少女邂逅』が。私、この映画撮る前に新大久保で構想聞いてた!!とか思いながら(笑)。

でも、あれを撮って紗子ちゃんに見てもらうのがめっちゃ怖かった。

槙田 え、なんで!?