INTERVIEW FILE 023 枝優花
May 30, 2020

INTERVIEW FILE 023 枝優花 (映画監督)

自粛期間中にインスタライブで行われた、映画監督・枝優花さんとの公開マキタジャーナル。せっせと、槙田紗子さんが原稿にまとめてくださいました!2020年のある5月の日の記録としても、是非、お楽しみください。 ここから新しいこと、始めていきましょう!

編集=原利彦 文=槙田紗子
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真1
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真2
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真3
INTERVIEW FILE 023 枝優花 写真4

なんかさ、あれを撮る前から私のことを知ってる人が、見てどう思うのかな?とかもあるし。あとは映画の趣味が合うからこそ、自分が撮ったものを気に入ってもらえなかったらちょっと落ち込むな〜とか思ってたの。

槙田 まじ?私、劇場で観た後すごいテンションで枝ちゃんにLINEしたの覚えてるよ。

そう。すごいテンションでLINE来て、本当にホッとした。

槙田 なんかつぼなんだよね、枝ちゃんの感性が。本当に。

嬉しい。

槙田 枝ちゃんすごい映画撮ってしまったなあと思って。そしたら、賞とか取りまくってるし、いろんな国から呼ばれまくってるし、本当にすごいことになってて。人生って夢あるなあって思った。以前はメイキングカメラとか助監督とか、そういうお仕事もたくさんやってたじゃん。そういうお仕事の環境から、監督っていう自分が主導権を握らなきゃいけない環境が圧倒的に増えたと思うの。

うんうん。

槙田 その変化の中で何を感じてたとか、すごい知りたい。

自分の精神的にはずっと同じかも。というか、ずっと必死だったから、必死のポイントが変わってる
だけ(笑)でも、確実に変わったのは、守られる存在から守る側になったことかな。監督になってからは、スタッフの人権を守るとか、作品を守るとか、そこは視点が変わったからすごく難しいなと思った。ある意味、スタッフとして監督のために全身全霊で働くほうが自分は楽だった。自分が監督の場合は、その作品の中心に立って、作品を守るために時にはけんかをしたり、パフォーマンスとして怒らなきゃいけないときもあるから。あとは、誰よりもその作品を愛するために努力をしなきゃいけない。これは当たり前なんだけど、いつもそれで自分の努力が足りてないんじゃないかっていう葛藤があるんだよね。名前が出る以上はちゃんとやりたい、みたいなところで、いつもやり過ぎちゃうというか。ひたすら自分と向き合って、自分と戦わなきゃいけないことが増えた。多分、紗子ちゃんは分かると思うけど、常に過去の自分と対峙してるんだよね。前はこんなに頑張れたのに、今の自分頑張れてなくない?とか、前はできたのに、今出来てないよね?さぼってるよね?っていうのを常に自分の中でやってるから、どんどんハードルが上がっていく。そもそも過去の自分も記憶の中でしかないから分からないんだけど、なんか怖い。過去の自分よりも頑張れてないかも、みたいなところで。

槙田 それこそ、名前が出てるプレッシャーだよね。過去を越えていかなきゃいけないって感じちゃうよね。

そう。越えるって、もはや何だって話だけど。勝手に自分の中で背負ってる。あと、監督は大変だなと思ったのは、みんなの目に見えない部分での仕事が多い。家にいても、電車に乗ってても、ずっと作品のことを考えてるから、ある意味まっさらなプライベートがないというか。

槙田 だから、ぶっ倒れるんだよ!

ね。MV一つにしても、アイディア勝負なとこがあるから、思いつかないと地獄だよね。1カ月くらいずーっとその曲を聴いてるから、リリースの瞬間とか、今世の中で私が一番この曲聴いてるぞって、いつも思う。本当に何千回も聴くから、そこから1年間ぐらいその曲聴かないもん。

槙田 世に出た瞬間に、もういいやってなるんだ。

うん。やっと自分の手から離れた!って思うくらいにはずっと聴いてる。だから、こういうのもなんだけど、自粛期間になってインプットの時間ができてるなって思う。

槙田 そうだよね。枝ちゃんはアウトプットが多過ぎるよね。私がSNSとか見て把握してる限りでも、映像を残すお仕事以外にも、コラムの連載やったり、あとこれは作品のためだと思うんだけど、SNSでフォロワーからの質問に答えたりよくやってるじゃん。そういうの見てると、この人、いつどこでインプットしてるんだろうって思う。私はインプットとアウトプットのバランスが崩れた瞬間に情緒不安定になるからさ。枝ちゃんなんてもっともっとアウトプットしてるだろうから、どうやって過ごしてるんだろうって思う。

きついよ。きついとか言っちゃいけないけど(笑)。普段は、なるべく新作を劇場で見ようと時間を絞り出して映画館に行くけど、逆に過去の名作みたいなものを家でじっくり見る時間がなくて。昔のフランス映画みたいに会話がほぼない!みたいな作品も本当は大好きなんだけど、余裕がないときはあれを消化しきれなくて途中で眠くなっちゃったり。でも今は、家でそういう作品を見返して、ちゃんと心が動くぐらいの余裕があるから、人間として生きてるな〜って思う。本当は、普段からそういう時間をもっと作っていかないといけないんだけど、なかなかね。生きていくってことと自分の感性を保つってことの両立が、日本はすごく難しいのかもしれない。

槙田 確かに。自分からインプットしにいくしかないもんね、勝手に入ってくるっていうよりは。

そんな感じ。余裕がないな。

槙田 今はもちろん大変な時期だけど、クリエイティブなことをしてる人にとってはある意味すごく貴重な時間なのかもしれないよね。

確かにそうだね。今、世界的に見てもすごく異常な状態で、今後生み出される作品にも確実に影響していくから。多分、いろんなクリエイターの人たちはこれを受けて、どういうものを世に出していくのが良いのかっていうのは考えていると思う。

槙田 コロナが落ち着いたら、映画はどうなっていくと思う?

今、Zoomで映画とか演劇とかやってるのも見るけど、やっぱり自分の中であれは映画ではないと思っているというか、あれは動画作品だと思っていて。あれはあれで別にいいんだけど、希望を言うなれば、孤独な時間が多いからこそもう少し映画館に行きたくなる空気ができればいいなと思う。家で見れるからいいじゃんってなるのではなくて、映画館に行く、みんなで見るってやっぱいいなってなるといいなって。

槙田 うんうん。

でも、正直今の状態だと撮影ができないからどうしようとは思うよね。細かい話だけど、キスシーンできないじゃん、みたいな。

槙田 超濃厚接触だもんね。

密ですってなっちゃうから(笑)。新しいラブストーリーが生まれるのかもしれないし。

槙田 絶対に触れられない2人、とかね(笑)。

そうそう。でも、オリンピックが本当はあったじゃないですか。だから、オリンピックに向けて日本人がすごく切迫しながら頑張っているところがあったけど、もし予定通り開催されていたら、多分そこまでは頑張って経済も回るけど、きっと終わった後に不景気になって、世間は暗いんだけど気持ちだけは明るくいきたいから、やけに明るい作品ばかりが世に出て、みんな頑張っていきましょう!みたいな空気になるかなと思ってたんだよね。今、こういう状態になってしまったから、今後どうなっていくのかはわからないけど、私は、みんなで何かをやらなきゃ!みたいな空気が結構しんどくて。

槙田 分かるよ。