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柳田光司の「お笑いテレビ裏方稼業」

お笑いテレビ裏方稼業

お笑いテレビ裏方稼業③ 「鮫」の生い立ちについては深くは知らない。

「鮫」の生い立ちについては深くは知らない。
ただ、ヤツが在日韓国人であることだけは知っていた。
出会いは最悪だった。

何の後ろ盾もなく 東京にのこのこやって来た俺(柳田)の食い扶持は、
エロ風俗店の広告をとることだった。難しい話ではなかった。
フーテン生活で…自暴自棄だった俺は、関西でも似たような仕事をしていた。
人脈は必要ない。“開き直れば…”誰でもできる。要は、度胸だ。

今の風俗事情はまったく知らないが、当時、東京狙い目は池袋西口、大塚のピンサロ。
五反田、目黒の雑居ビルに入り込んでいるソフトSMクラブ。
コレらを、片っ端から飛び込み 営業を行う。
何軒かまわるうちに…男性社員の三行求人広告ぐらいはもらえる。

もちろん「前金(先払いのこと)」だ。
ヤツらも百戦錬磨だ。
俺が、持ち逃げする人間か?否か?すぐわかる。
ヘタを打つこと。不義理をかますことは、死活に直結する。

求人広告は、一行 幾らの世界だ。
屋号、連絡先、伝えたいこと。最低でも、二行はかかる。
1回からでも受け付ける事は可能だが まずそんな店はどこにもない。

突発的な三行広告は、誰かへのスパイ行為と見なされ ひじょうに危ない。
一文字を倍の大きさにすれば 縦横2マスの合計4マス。
存在感も 一気に増す。『飲食』『急募』『募集』『給与』にはじまり
『接待』『接客』『個室』。『コンパニオン』『S即金・日払い可』と字数が増せば売り上げも自然とあがる。だが、油断は禁物だ。「鮫」は、その最たるヤツだった。

場所は、大阪なんば。昔、新歌舞伎座があった裏手通り。
関西でもっともカビ臭い「裏ビデ」「SM」「ゲー」の密集エリアだった。

“売り”と“買い”が密談される“男と男の社交場”。
いつもの約束時間。
夕方4時半きっちりにやって来るゲーボーイの店長が、その日に限って来ない。

携帯電話がまだ普及していない時代だ。
連絡しょうがない。
だが、鼻の奥を突き上げる悪臭に耐えられるリミットは5分だ。
「ホモ」や「オカマ」を毛嫌いしているのではない。
何をやっているか?わからない… 不道徳極まりない店の扉の向こう側には、
明日のダブロイド版に掲載される「死体」や「シャブ」や「注射器」があっても何ら不思議ではない。要は、身の潔白を証明するための行動であった。

「鮫」とは、この時代に出会った。
「鮫」の「オンナ」からの紹介だった。
「鮫」の「オンナ」は、「SM倶楽部」を手広く仕切っていた。
店は「M専(マゾ男専門のSM倶楽部)」。
「鮫」の「オンナ」は、裸一貫SM嬢から成りあがった経営者であった。
「鮫」は、明らかに自分より年増のオンナのヒモであり、極つぶしだった。
そんな、どうしょうもない男との会話のはじまりは…何処からとなく聞いた新商売の相談だった。 「ペットのブリーダー」「ダイヤルQ2」「性感・ニューハーフマッサージ」

…どれもこれも旬を過ぎた、塀の上を走るようなモノばかりだった。

「H(鮫の日本人帰化名)さん!
…三行記事原稿、いくらでも書きますが、多分アカン(商売は当たらない)と思います。正直、もう一回、じっくり考えられた方がいいと思いますよ」

「今さら、何を言うてますの?柳田さん!
 カネなら、ほら!…ちゃんと前金で用意してますんで、頼みますわ!」

「では、予約専用の電話番号からお願いします」

皮のバックから カーボン紙を取り出しカビ臭い湿気た休憩場で 原稿を書く。
ビビって(怖じ気づく事)ペンを走らせると、相手(鮫、Kのこと)は必要以上にアップをかまし始め、なめてかかり、挙句、恐喝まがいの事をふっかける。

そんな時、俺はバカ丁寧な言葉を使いながらも、さも頭がイカれた無神経な男を装いながら、事務所にある固定電話を無断で借りる。

「鮫」が俺に伝えた電話番号が、さっき書いたばかりの番号と照合すればOK。
つまり、ツーツーと“話し中”なら問題はない。
だが、20回に1度ぐらいの割合で…なぜか?…電話が通じる事がある。

「もしもし、そちら…? えっ?新大阪ニューハーフ専科…??
申し訳ございません!ちなみに そちらの電話番号は…」

「鮫」は、わざと間違った電話番号(内線番号)を教え… ミス掲載させ …
迷惑料という題目で 定価の倍返しを狙う意地汚い男だった。

                               (つづく)

■著者プロフィール/柳田光司
1968年生まれ。本業は『放送作家』
現在『あの頃の、昭和館』という映像・音声ブログを配信中。
その中の音声コンテンツ『現代漫才論(仮)』では企画~出演~編集もやっています。

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