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【受賞作品リンクあり】2020年「太田エロティック・マンガ賞」結果発表!

2020年も「太田エロティック・マンガ賞」に多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。今回はエロティクス賞、優秀賞、奨励賞2作、あわせて4作品が入賞となりました。山本直樹による講評も添えて、ここに発表いたします!

【2020年】太田エロティック・マンガ賞
審査員:山本直樹、太田出版編集部、pixiv編集員
賞金:エロティクス賞 10万円(1名)、優秀賞 5万円(1名)、奨励賞 3万円(若干名)
次回の募集については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内します。

エロティクス賞

賞品:pixivコミックに掲載、賞金10万円

夜野ムクロジ
「夜の私を歩く場所」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    絵がシンプルで良かったです。それほどエロではないんだけど、会話の場面が、登場人物同士のやりとりにとどまらず、読者との対話という点まで含めてちゃんと成立していました。緻密な伏線回収とかで読ませる内容ではないので、これでつまらない会話や人物造形だったら本当にただ読者がついていけない話になってしまう。でもこの作品はしっかりと面白さがありました。マンガは”先が気になって読んでしまう”というのがとても重要なことです。夜に歩いているうちに予測のつかない展開がどんどん出てくる、その突拍子のなさだけでも読ませるところが面白いと思いました。

優秀賞

賞品:賞金5万円

海岸亭
「自殺旅行」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    基本がちゃんとわかっている人だと感じました。これもあまりエロではなくて、キャラふたりが会話しながらあちこち行くだけの話なんですけど、ちゃんと対話ができているので引き込まれて読んでしまいました。最後にふたりがばったり再会する場面は突然すぎではあるんですけど、それは前半にちょっと伏線を足せば技術的に解決できることです。自分にそういう癖があると意識して工夫しながら描けばいいでしょう。「自殺」という重いことが軽やかに描かれていて、間抜けなようでだんだん楽しくなってくるところが良いと思いました。

奨励賞

賞品:賞金3万円

みん_(奥田成美)〜~
「永くても春」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    「エロ」というより「エロ論」みたいなマンガでした。構図がしっかりしていて、単純な線でうまい絵を描けるのは素晴らしいと思います。タイトルが入ったページのデザインも格好良いですね。雰囲気だけのマンガとも言えるんですが、お話と絵が合っているので十分読ませることができてます。これからもたくさん描いていけばさらに上手になると思いました。



楽gaki
「もも缶3」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    この作品では話せるキャラクターがひとりなので、ずっとそのキャラのモノローグで話が進んでいくわけですが、にもかかわらず読者との対話がしっかりとできていました。ただ、お話がきちんと完結していないのは残念ですね。奨励賞以上をめざすならしっかり終わらせてほしいです。



総評

  • レビュアー
    山本直樹 講評

    今回、全般に「『ダイアローグ(対話)』と『モノローグ(独り言)』」という課題があると感じました。登場人物同士が会話している場面でも、実際は作者の「独り言」としか伝わってこない作品がとても多かったです。言い方が難しいですけど、マンガでの「対話」というのは、字やセリフのことだけじゃなくて、キャラとキャラが一緒に歩いてどこかに行くというようなことまで含めて成立する、と言えばいいでしょうか。キャラ同士のやりとりに読み手が聞き耳を立てたくなる、一種の”開いている”感覚というか。それができていれば、読者もお話の中に少しずつ入っていける。

    マンガの面白いところは、読んでいるうちに線で描かれたキャラが実際に話したり感情が動いてるように見えてくることだから、作者の「独り言」では読者に全然響いてこない。一人の人間が頭で考えるという意味では、マンガを描く行為は全部モノローグから始まるんでしょうけれども、そこからどうすれば「対話」にできるのかは非常に難しい問題です。そこを超えられるかどうかは、新人作家がプロになれるかなれないかの分かれ道になるぐらい重要だと思います。

    ではどうすればいいのかというと、すごくつまらない結論ですけど、日々の勉強をやり続けるしかないですね。自分が本当に描きたい話だったら、ネーム段階で何回も、しつこく読んでみる。そのうち「この会話はつまらない」と自分でも分かるようになってくる。その積み重ねだと思います。キャラが本当にコミュニケーションしているように見せられることは、マンガ家という「嘘をつく職業」にとってとても大事です。
    今回の受賞作は、対読者も含めた「対話」を描けているところが共通していました。

    あと、スケッチというか1、2ページの断片での応募が多かったですね。手軽に投稿できる利点と裏腹ではあるんですけど。「私はこういう絵を描きます」という名刺のような投稿は、その特定の絵「だけ」を描きたいんだなという印象になってしまうので、もう少し頑張って"1本のマンガ"にしてほしいです。複数話に分かれた作品でも、応募する時は1話にまとめ直すくらいはしてもらいたいですね。