建築家・谷尻誠の「完成しない家」のような生き方
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建築家・谷尻誠の「完成しない家」のような生き方

 目の前にある当たり前の概念にとらわれず、常に新たな課題に取り組み続け
若手建築家として注目を集める谷尻誠。これまでに100以上の建築を手掛けてきた彼が理想とする家は「完成しない家」だという。それは常に成長、変化し続ける彼自身の生き方に似ているのかもしれない。建築家として独立12年目を迎える彼に現在の心境を聞いた。

*  *  *
 建築は様々なジャンルの方と一緒に仕事をすることができます。音楽の方に会えば、音で感じる空間の大きさについて学ぶことが出来たり、ファッションの方に会えば、ファッションの中にある構造が建築との関係に繋がっていることがわかったりと、誰に会っても自分のやっていることに役に立っていくので、そこにやりがいを感じていますね。

 もともとは洋服好きだったのですが、雑誌に出ているスタイリストさんたちの背景、つまりは住んでいる家や持っているものに興味が拡がり、徐々に家具に興味を持つようになりました。その延長線上で、建築に興味をもったことがきっかけとなり、建築の世界に入ることになったのですが、なにも解らなかった僕も、もう独立して12年目を迎えます。

 色々な知識や経験を得ることが出来ましたが、いまだに初心でいたいと思っています。出来ることが増えて来ましたが、それでも今までの経験や知識は活かしながらも、できることよりはやりたいことに向き合いながら、新しい価値観を見つけて行くことの大切さを建築という仕事を通じて学んだように思いますね。昔の人たちが、つねにイノベーションを続けたからこそ今の時代に残るもの、つまりは伝統やスタンダードが生まれているのだとしたならば、僕らも過去にすがりすぎることなく、イノベーションを続け、未来に"たすき"を渡すことが、とても大切なのではないかと考えています。

 自分にとっての理想の家は、「完成しない家」。自然のように日々うつろう美しさを持ち得るような家、それは未完成でありながらも、日々完成と言える概念をもっているとも言えるのではないでしょうか。出来たときが完成ではなく、季節や時間と共に変化していける、そんな家が僕にとっての理想の家です。

 常に自分を超えたいと思っており、いまに満足することなく、もっと良い建築、そして考え方を世の中に提案していきたいものです。知らないことを知らないと言えることが自分らしさであり、わかったつもりになることなく、好奇心を持ち続けれることが、新しい建築をつくることに繋がっていくような気がしています。

【プロフィール】
谷尻誠(たにじり まこと)
1974年広島生まれ。建築家。これまで手がけた住宅は100を超え、現在国内外で、インテリアから複合施設まで様々なプロジェクトが進行中。THE INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARD(chicago)、福岡県美しいまちづくり建築賞大賞、モダンリビング大賞など、受賞多数。2012年3月、『1000%の建築~僕は勘違いしながら生きてきた』を出版。2013年にも2冊著書を出版予定。
http://www.suppose.jp

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