INTERVIEW 017 渡瀬マキさん
INTERVIEW 017 Sep.26.2017

渡瀬マキさん (LINDBERG)

アメリカンガールズロックユニット・PASSPO☆によるインタビュー連載企画! 第17回目のゲストは、渡瀬マキさんです。音楽を始めたきっかけやこれまでの活動についてはもちろん、二児の母でもある渡瀬さんの話にメンバーは大興奮!? 人生の先輩としてタメになるお話をたくさん聞かせてもらいました。

編集=原カントくん、岸野愛 撮影=IZUMI SAITO
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玉井 「渡瀬さんは最初、アイドルっていう形で活動され始めたと思うんですけど、そこからなぜバンドになっていったんですか?」

渡瀬 「最初は、松田聖子さんに憧れていて、私もこういう人になろうって思ってて。オーディションにやっと受かって、高校3年生のときに東京に来たんです。いわゆるフリフリの衣装を着させてもらって、デパートの屋上とかスキー場で歌わせてもらって」

根岸 「イベントスペースみたいな」

渡瀬 「で、それから1年半ぐらい経った頃かな。シングル1枚目の曲をもらって仕事をしているときにはすでに『なんか違うな』って思い始めてて……この曲にはこれっていう決められた衣装さえも嫌になってしまったんです。で、自分の好きな服を着たいと思って、事務所の社長には内緒でボロボロのジーパンとかロックTシャツとか、自前の服を着て歌ったんですね」

PASSPO☆ 「すごい……!」

渡瀬 「当然すぐバレて、社長に『なんでそんなことをするんだ』って言われたんですけど、今がチャンスだと思って『これは私のやりたいことじゃない気がするんです』って言ったんです。そうしたら、『じゃあデパートの屋上はやめてライブハウスで、カラオケやめて生バンドにするか』って言ってくれたんですよ」

PASSPO☆ 「へー!」

渡瀬 「そのあとすぐに、演奏をしてくれるバックバンドのお兄さんたちを探してきてくれて。その中に、今のLINDBERGのギタリストであり、夫でもある平川達也がいたんです。一目見たときから、うちの父にそっくりで、すごく親近感が湧いて。この人やったら信用できるなと思って、書き溜めていた歌詞を渡したら、『次のリハまでに曲付けてきてあげるよ』って言ってくれたんですよ。で、初めてメロディーが付いた自分の歌詞を生バンドで歌ってみたら、私のやりたいことはこれや!って、すごい感動して。彼が、『それならバンドがいいんじゃない?』って、今のベースの川添くんとドラムのCHERRYさんを連れてきてくれて、LINDBERGになったんです」

PASSPO☆ 「すごい!!」

渡瀬 「みんな、すごいなリアクションが(笑)」

増井 「鳥肌立ちました!!」

岩村 「もともとロックが好きだったんですか?」

渡瀬 「中学のときはバンドが流行ってたし、目立ってた子たちとかが学園祭のためだけにやったりすることはあったんやけど、私はあまり興味がなく。ただ、聖子ちゃんの次にレベッカさんにガビーンと衝撃を受けて、音楽自体はすごい聞いてました」

増井 「2002年に1回バンドを解散をしたと思いますが、どうしてだったんですか?」

渡瀬 「私、1999年に長男を産んでるんですね。出産が11月って決まってるから、それまでにレコーディングをしたりとか、臨月までずっと仕事をしてたんですね。出産後も、来年のスケジュールは、何月に復帰ライブがあって、その後ツアーがあって……そのように生きていくと私は思ってたんです。……思ってたんですよ。だけど、(出産してから)ものすごいかわいくって。私の全細胞と全ホルモンが息子を求めてしまって、1ミリも離れたくないっていう気持ちになってしまったんです。産んでみて初めて分かったんですけど。だけど仕事のスケジュールは決まっていたから、復帰ライブに向けて断乳したり、息子が泣いても『行ってくるね』って言って仕事に行くっていうことを、2年間頑張ったんですよ。でも、あるとき息子が入院したときに、私がちょうどツアー中だったことがあって。入院したからってライブは休めないじゃないですか。大阪から名古屋に移動する移動日に、入院してる息子の様子を見に行って、1日だけ一緒のベッドで寝て、次の日にまたライブ会場に向かって。その電車の中で、夫である平川達也に『なぜ私の一番愛している息子のそばに、私は母親なのにいれないんだ』って号泣しながら訴えて、本当に苦しかったんですね。もうこれ以上自分の気持ちに逆らって生きていくことができないし、決定的にこれはあかんなって思ったから、メンバーには『申し訳ないけど、解散してほしい』って言ったんです」

藤本 「そんなことが……」

安斉 「泣きそう」

渡瀬 「そこで休止っていうと、またいつか活動するって期待させてしまうかもしれないし。ファンの人にも、息子にもどっちつかずの感じになるのは失礼やから、解散するしかないなって思ったんです」

岩村 「そうだったんですね」

安斉 「結婚や妊娠を発表したときって、お客さんの反応ってどうでした?」

渡瀬 「イエーイ!でした。それはやっぱり相手がたっちゃんっていうか、平川達也だからだと思います」

PASSPO☆ 「あったかい!」「理想だね」

渡瀬 「絶対に自分の口で言って回りたかったから、結婚発表ツアーみたいなんがちゃんとあって」

PASSPO☆ 「すごーい!」「すてき」

岩村 「(自分も)やりたいとは思ったけど、結構大変なことだよね」

玉井 「マキさんの性格を知っているというか、ファンの方も多分、マキさんの筋が通っていて、正直に生きているところが好きなんでしょうね」

「それにしても、はっきりしてて、すごい」

安斉 「決断力がすごいよね」

「なかなかできない」

渡瀬 「そんなことないっすよ。がーってやっちゃえば(笑)」

「かっこいい!」

安斉 「ちなみに、旦那さんと結婚しようと思った決め手はなんだったんですか?」

渡瀬 「さっきも言ったけど、“父に似てる”っていうとこから入ってるから、ものすごく親近感もあったし、すごく波長が合っていて。でも、私は全然タイプじゃないから、恋愛とは違って。私の親友に『たっちゃんいい人だから、1回付き合ってみな』って、自分から薦めてみたりするほどだった(笑)。だから、最初に告白されたときは本当に困ったの。明日も明後日も会うのに……」

藤本 「ノーとは言えない状態みたい……」

渡瀬 「ううん、ノーって言いましたよ、だから。『たっちゃん、びっくりするやん、そんなこと』って。そんな素振り1ミリも出したことなかったのにって」

渡瀬 「だから1回お断りしたっていうか、『明日も明後日も会うからそれ以上は言わんといて』って言ったら、『わかった』って言って、次の日からまた普通に戻ったの。そうしたら、また2年後ぐらいに、もう1回言って来たんです」

PASSPO☆ 「!」

渡瀬 「ちゃんとタイミング見てるね、達也(笑)。で、2回目に言われたときに、さすがに角度を変えて、彼を初めて男として見てみたの。こうやって」

PASSPO☆ 「物理的……」

渡瀬 「そしたら、あれ?ふむふむふむ……いろんな人に薦めてきたけど、私、この人と結婚するかもしれへんなって思ったの。それでお付き合いしてみたんです」

PASSPO☆ 「良かった?」

安斉 「たぶん、たっちゃんさんは出会ってからずっとそう思ってたと思う!」

根岸 「ずっと同じメンバーさんと一緒にやっていらっしゃいますけど、メンバーの中でケンカしたことはありますか?」

渡瀬 「すごいあったよ。いっぱいある」

玉井 「どんなケンカ?」

渡瀬 「音楽的なことはしょっちゅう言い合ったりするけど、一番最初の大きなケンカは、ドラムの小柳昌法(以下、CHERRY)との大ゲンカ。彼がLINDBERGのドラムをやるのか、それとも今まで自分がやってきたバンドをやるのか、すごく悩んでた時期があって。ちょうど自分のバンドのリハがあって、そのあとLINDBERGのリハがあるっていう日があったんですね。でも、LINDBERGのリハの時間になっても、スタジオにCHERRYがいなくて。どこに行ったのかなと思ったら、ご飯食べに行ってんですよね。自分のバンドのリハが終わって、すぐに私たちのリハやったから、ご飯を食べる時間がなかったらしいんですけど、私たちとしては『えっ』みたいな。なんで私たちのリハの時間を削って、ご飯食べに行かないかんのやろと思ったら、すごくカチーンときて。CHERRYがスタジオに帰ってきたときに『何やっとんの、私をアイドルやと思ってナメんといてや』って」

PASSPO☆ 「かっこいい……」

渡瀬 「これ、今でも“ちゃんマキの名ゼリフ”って言われてるんですけど(笑)。やっぱり私もすごい必死やったし、一生懸命やったし、そのことに一生懸命なってくれない人に対して、すごく腹立ったんでしょうね。で、そのあと私はスタジオを飛び出して、事務所に帰ったんです。そしたら社長に『マキ、いいのか、このままここにいて。このままじゃバンド終わるぞ』って言われて。それはいかんと思って、すぐまたスタジオに戻って、すっごい嫌な空気のままリハーサルやって。でも、CHERRYと家がすごい近くて、CHERRYが持ってた楽器車で常に移動してたから、帰りは二人っきりなの。すごい嫌でしょう、これ(笑)」

PASSPO☆ 「確かに(笑)」

渡瀬 「でも、CHERRYが『悪かったな』って言ってくれたから、私も謝って、バンドは壊れずに済みました」

藤本 「事務所の社長さん、お父さんみたいな存在ですね」

渡瀬 「そうですよね。こんなに言ってくれる社長は、なかなかいないかもしれないね」

「今まで楽しかったとか、印象に残っているライブってありますか?」

渡瀬 「2009年に20周年ってことで、1年間だけ限定で復活して12月31日まで活動したんですけど、やっぱりそのときのライブかな。ライブっていうか、1年間突っ走った、それがすごく印象的だった。イベンターさんも言ってたけど、1年で東京都内だけでライブを6本うったのは初めてです」

PASSPO☆ 「すごい」

渡瀬 「ライブやりまくったんです。とにかく、7年ぶりとかに人の前に出て。昔は夏フェスみたいな言葉もなく、夏のイベントみたいな感じだったけど、そういうのにも出させてもらったりしたから、すごい濃厚やったの。だからその1年がすごい印象的」

「フェスだと有名な曲とか歌うんですか? たくさん」

渡瀬 「そうですね。有名な曲だけしかやらないですね」

安斉 「楽しそう!」

玉井 「私たちもやりたい、野外で。野外でライブ!」

渡瀬 「やっぱ夏フェスとか出るんですか?」

玉井 「『TOKYO IDOL FESTIVAL』っていうのがあって、それが一番アイドルの大きいフェスみたいな感じなんですけど、PASSPO☆もフェスがスタートした2010年からずっと出させてもらってます」

根岸 「渡瀬さんは、ずっと続けてて良かったなって思うことはありますか? 続ける良さというか」

渡瀬 「やっぱり15、16、17、18……中高生だったファンの子が大人になり、結婚し、子どもを連れて見に来てくれることかな。それはすごくよかったなって思う」

玉井 「2世代でってことですよね。すごい、一緒に年を重ねてってるんですね」

藤本 「30年……そうなるのか」

「でも私たちのファンの人も、ファン同士で結婚して出産した子とかも、何人かいるんですよ」

渡瀬 「早いね」

安斉 「普通のギャルだった子が、お母さんの顔になってて。うれしいですよね、すごく」

渡瀬 「やっぱうれしいよね。LINDBERGのライブでは子どもたちの声とか、すごいそこら中でしてるけど、どうぞお気になさらずにって感じ。例えバラードでギャー!って言っても、全然大丈夫だからって思ってます」

PASSPO☆ 「すてき」

増井 「いろいろな経験を経て、今の悩みとかありますか?」

渡瀬 「今の悩みね、本当に笑ってしまうんだけど、緊張してしまうこと(笑)」

PASSPO☆ 「そうなんですか!?(笑)」

藤本 「昔はしなかったってことですか?

渡瀬 「全然しなかった。やっぱり10代、20代って怖いもの知らずっていうか、何も怖くなかった。多分深く考える余裕もなくて、ただ目の前のことをがむしゃらにやってたんだけど、それって実はすごい良かったなって思う。子どもを産んだら何も怖くなくなるって言うんやけど、私は逆にすべてのものが怖なってしまって……それが悩みなの。もうすべてのものが怖くてたまらないのよ」

増井 「それはやっぱ大切なものができたからとか、そういうことですよね」

渡瀬 「そうなのかな」

増井 「そんな気がします」

渡瀬 「本当にこれ、どうにかしたい……」

藤本 「ステージに立ってるときも緊張しちゃうんですか?」

渡瀬 「そうです。いい緊張やったらいいよ? でも、もう何百回と歌った『今すぐKiss Me』だって、歌詞が出てこなくなるし、声も震えるんですよ、緊張をプラスに変える力がないから、体を固めたまま、のどを固めたまま、ステージに立ってしまう。本当にハチャメチャになっちゃって、毎回楽屋に帰って反省ザルみたいになってる」

増井 「全然想像つかないです」

渡瀬 「本当、どうにかしたいんですよ。本気の悩み!」

安斉 「活動を続けてきて、“これだけは守り続けてきてる”ということはありますか?」

渡瀬 「ライブの前にみんなで言い合っていることなんやけど、『何が起こっても、何があっても、絶対笑顔に変えよう』っていうこと。いろんな人がいるし、いろんなハプニングが起こるよね。でも、全部笑いに変えようっていう心構えでステージに立つと、予想外のことが起きてもすぐ対処ができる。逆にそう思っていないと、ちょっとテンパってしまうから。大丈夫、すべてを受けとめる、すべてを笑いに変える!って思っていけば大丈夫です」

PASSPO☆ 「次からやろう!」

「息子さんは、ライブを見に来たことありますか?」

渡瀬 「一番最後に見たのが2009年の、再結成のとき。武道館に来たんやけど、私の席から彼が見えて」

玉井 「お母さんが武道館に立つって、すごいよね」

PASSPO☆ 「ウンウン」

渡瀬 「いやいや、それがそのときは息子が小学校4年生か5年生で、ちょっと反抗期が始まりかけてて。だから、無理やり見に来たって感じの彼の態度が気になって気になって……」

藤本 「お母さんだ、ちゃんと」

渡瀬 「早く終わんないかな、かったるーみたいな、アピールがひどくて。歌いながら、『この野郎……』と思いながら(笑)。見に来たのは、それが最後。もう息子も来たいとも思わへんやろし、私も呼びたいとも思わへん」

安斉 「お子さんは、音楽やってないんですか?」

渡瀬 「中学2年生の娘は軽音部でドラムとかやって。幼稚園のときから『太鼓の達人』が大好きで。息子ももちろん音楽大好きで、とにかくいろんなYouTubeを見せてくれますね。『マキちゃん、これ、かっこいいよ』って。『これ、やばくね』みたいな(笑)。新しいいいものは全部息子が教えてくれてます」

増井 「仲良しなんですね」

渡瀬 「もう高3やから、そういう時期は終了って感じかな」

根岸 「大きくなってあらためてライブを見に来たら、息子さんも多分、すごい感動するんじゃないかなって思います」

渡瀬 「しいひん。全然しいひんよ。この間、LINDBERG がDVDを出したんですけど、今まで出したミュージックビデオをすべて入れた36曲入りなんですよ。そこに新曲も入れたんですね。で、新曲のプロモーションビデオも撮って入れたんですけど、それは家で作業中に息子がたまたま見に来て『マキちゃんたちも、ちょっと“今”に近づいて来たね』って」

PASSPO☆ 「やばい。」「すごい」

渡瀬 「なかなか今っぽくなってきてんじゃね?って、すんごい上から目線で言ってくるからね(笑)」

岩村 「ママじゃなくて、マキちゃんって呼ばれてるんですか?」

渡瀬 「そうなっちゃった」

PASSPO☆ 「すてき」「かわいい!」

渡瀬 「マキちゃん、たっちゃんって、小学校の頃からそうやって呼んでますね。娘はとうちゃん、かあちゃんなんですけど(笑)」

根岸 「(笑) では最後に大事なことをお聞きします。マキさんにとってLINDBERGとは?」

渡瀬 「難しいね……。こないだ、V6の森田くんが『あなたにとってV6とは?』って聞かれて、メンバーの中で一人だけ『仕事仲間』って言っていて」

PASSPO☆ 「面白い(笑)」

渡瀬 「冷めてるって言われていたけど、私はそれはそれで、面白いなというか、確かになと思って。メンバーとかよく『家です』みたいなこと言うんやけど、家でもないかな。学校でもないしな……」

玉井 「仕事仲間?」

渡瀬 「……………そうやな。ごめんね、すごい時間かかって」

PASSPO☆ 「全然、大丈夫です(笑)」

渡瀬 「でも仕事はどけといて、仲間やな。たぶんLINDBERG は、LINDBERGの音をこの4人でしか出せへん。そういう仲間かな」

PASSPO☆ 「ありがとうございます!」