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私が踊るとき

2010.1.26 | 本人編集部

※以下、ようやくネタバレ気にせずに書ける。


●『モテキ3』読了。土井亜紀が玉乱。

●『不機嫌なメアリー・ポピンズ』『犬は「びよ」と鳴いていた』読了。そうか、犬は「びよ」と鳴いていたのか...。

●日曜日の北山耕平さんのトークショー、無事盛況に終わる。北山さんが東京でこういう会を催すこと自体、ひじょうに貴重なことだったようで、話を聞けた人はラッキーでしたね。

●そのまま三茶へ移動して珍しいキノコ舞踊団『私が踊るとき』を観る。珍しいキノコ~は、(昨年の『The Rainy Table』(×Plaplax)や、原美術館庭園の松明や、ホテルクラスカのロビーなどなど)好きすぎる公演がこれまでにもたくさんあるので、「今回、あれらの作品を超えることはさすがに無理なんじゃないか、これで失望してしまったら自分の好きなものがひとつ減ってしまう、どうしよう...」という、よく分からない不安を抱きつつ毎回観に行くのですが、今回も最高でした。

開演前からステージ上に大きなラジカセが置いてあって、客席にはマイケル・ジャクソンがBGMでかかっている。このシチュエーションに『私が踊るとき』という今回の公演タイトルをかぶせるだけで、すでにグッときていたのですが、いよいよ客電が落ちると、

とつぜん陰気なドローン音が大音量で響き渡って、幕があがると、不思議なポーズで固まった女性ダンサーたちがステージ上に

そのままドローン音が持続している、ダンサーたちは微動だにしない、彫刻みたい

ゆーっくりと音が展開していく、けど相変わらず気持ちの悪い音、無理な姿勢をキープするのが難しいから(?)すこーしずつ体勢が崩れていくダンサーたち

と、徐々に音が展開していく?ダンサーの身体が少しずつ動いていく?

音のテンポ少しずつ上がっていく、「音」が「音楽」になっていく、あれ?どうやらこれ、ピッチをものすごく落として何かの曲をかけてるんじゃないか?と客席が気づき始める、ダンサーの動きがわずかずつだけど音(音楽)に合っていく、

と、そこで私、ようやく気づいちゃったんだ(稲川淳二風に)

これ、『宇宙のファンタジー』(EW&F)をものすごく遅くしてかけているんだ。

で、そこからさらにたっぷりと時間をかけて、じわじわと、客をじらすように、音楽のピッチを上げていって、ようやく通常のテンポで『宇宙のファンタジー』が鳴り響き、ダンサー全員の踊りがユニゾンになった瞬間、鳥肌が立ちました。

ここまで開演から10分くらい。
このオープニングで完全に気持ちをつかまれて、そのままラストまで一気でした。

今回はいつものコンテンポラリーダンス寄りではなく、エンターテイメント/ディスコ色が全開。ラストで『Just The Two Of Us(邦題は「クリスタルな恋人たち」←すごい!)』(ブラスバンドver.)・紙吹雪・映像の3点盛りをやられたときにゃあ、感極まって泣きそうになりました

圧倒的なスキルをもった人たちが、そのスキルに頼るんじゃなく(良い意味で)馬鹿馬鹿しい方角に向かって全力疾走すると、これだけ感動的なものができるんだ。と改めて思い知らされました。

で、カーテンコール。『セプテンバー』(EW&F)に合わせて(主宰の)伊藤千枝さんがマイクを握ると、客も立ち上がって踊るし、ダンサーたちも客席にどんどん乱入して客に合わせて踊るし、ホール全体が異様な多幸感。客席前から2列目にいた普通のおじさんが、薄くなった頭に紙吹雪をつけたまま一所懸命踊っていたのが良すぎでした。
で、終演後は再びマイケル・ジャクソンの曲がBGMに。
終演後、客席に知り合いが何人かいることに気づいたのですが、みんな顔がニコニコになっていました。

キノコ、本当すごい(たしかに珍しい)。

北尾修一