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スペシャル

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この度は「太田エロティック・マンガ賞」にご応募いただきありがとうございました。今回は200作品以上の応募の中から、エロティクス賞・優秀賞・奨励賞あわせて5作品が入賞となりました。応募へのお礼を込めて、最終選考に残りつつ辛くも受賞とならなかった方への講評もお届けします!

【2019年下半期】太田エロティック・マンガ賞
審査員:山本直樹、太田出版編集部、pixiv編集員
賞金:エロティクス賞 10万円(1名)、優秀賞 5万円(1名)、奨励賞 3万円(若干名)
次回の募集については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内します。

エロティクス賞

賞品:pixivコミックに掲載、賞金10万円

zngo
「苦楽外」
Pixivコミックで読む!!
全話一挙公開中!
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    ずば抜けて自分の世界が出来ていました。エロスという観点とは少し違うかもしれませんが、絵もうまく幻想文学的な味わいも素晴らしくて、文句のつけようがないと思います。もしかしてプロ経験ある人なのかな。今回同時に応募されていた『婆偶』のほうが、もしかしたらこの人本来の作風かもしれないけれど、その持ち味が出すぎていて、入っていける読者が少ないかもしれないと感じました。こっちはもう少し門戸が広いような気がする。同じく同時応募だった『大雨小歌』はわりとスケッチ的な感じで、僕も含めてそれが大好きな人はいますけど、作品としてバランスが良いのはやはり『苦楽下』だと思います。

優秀賞

賞品:賞金5万円

上田たんぽぽ
「ランデブー」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    不思議な世界を描こうとする人はたくさんいますが、実際にこのように描ける人はなかなか少ないです。エロさもちゃんとあって、男の子も女の子も生き生きと動いてる。作中でキャラクターの気持ちがちゃんと動いているのが伝わるというのはそれ自体で素晴らしいことです。終わり方もかっこよかったです。ゴトウユキコさんっぽい世界も感じさせつつ、しっかりと独自の世界を持っていると思います。絵もざっくり描いているようでうまいですし、作品の雰囲気とばっちり合っていました。

奨励賞

賞品:賞金3万円

いからしひなこ
「睡蓮華」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    自分の間で描けていますし、お話のリズムやテンポに合わせてページが進んでいくのが読んでいて気持ちよかったです。必ずしもエロがメインではないけれど、しっかりと人物の気持ちが描けているのも素晴らしい。この何気ない内容で41ページは多いと思われやすいかもしれないけれど、ちゃんと空気感が出ていて、この漫画に必要なページ数だった気がします。最後、雪の中に蓮華だけっていうのもうまいなと思いました。好きな世界です。



熊と翼
「ゲスの極み家族」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    絶望的だけどどこか明るい。作者の実体験かと思わされる迫力があります。これが想像だとしたらそれもすごいですけど。同時応募作『ショートエログラム』も、短いなりにまとまっていて良いと思いました。でもこの作品くらい長いほうが読みでがある。ただ絵の方が、言わば本番とラフが半々くらいの完成度なので、次はよりしっかりと仕上がったものを読んでみたいです。



海岸亭
「美大予備校生の苦悩」
  • レビュアー
    山本直樹 講評

    お話に勢いがあって、作中世界をしっかり描けていました。それだけでいいですよね。主人公も相手の女の子もちゃんと生きて動いている。終わり方も安易なハッピーエンドにするでもなく、無理やりどん底に行くでもなく。キャラふたりとも美大予備校生活がずっと続いていくと察せられるところがいいと思いました。

総評

  • レビュアー
    山本直樹 講評

    今回は全体的にレベルが高く、大賞と優秀賞をどれにしようか迷ったのは初めてですし、本当なら奨励賞を20本出したいくらいだったし、講評した以外にも光る作品は多々ありました。その中で大賞を獲得したzngoさんと優秀賞の上田さんの評価には、実際あまり差がありませんでした。奨励賞の3名も含めてみなさん個性を十分持っている人たちなので、細かくどうこう言うことはありません。とにかく描き続けてください。どんどん行っちゃってください。
    残念だったのはネームの字が小さく読みづらい作品があったことかな。好きな長さにできるのがweb投稿の良い点だと思うので。ストーリーやネームの量に合わせてページ数を変えるのも一つの手でしょう。あと最近の傾向として近親相姦ネタが多いですね。ドラマチックなお話にしやすいように見えますが、ショックが続くとお話が平板になってしまいます。
    漫画を描いていると、読者に対してだけじゃなく描いてる自分すらも「こんなはずじゃなかった…!」っていう良い意味の裏切りが顔を出す時があるんです。そこを逃さず首根っこを捕まえると、もっとお話が面白くなるはずです。

最終選考通過作品

今回は、惜しくも入賞とならなかった最終選考作品への講評も発表!

『アリスオブワンダー』ふぶきあおい
絵柄が特徴的でかわいいですし、描き方をしっかりと自分のものにされていますね。小さい女の子ものというありがちな話ではあるけれどちゃんとエロく描けていてよかったです。

『多角的青春』梓義朗
女の子の描き方がとても好きです。そして独特で良い絵柄だと思います。女の子が増えるという設定が多少唐突ではあるけれど、それを見せてしまえる漫画力と絵力がありました。

『KAWAII Mange Paris』オムラ・オム
ぶっ飛んでますね。すごいです。ただ、ぶっ飛んだ設定一発で通すのは、よほどうまく作品と自分の世界観にハマらないと難しいんじゃないでしょうか。どんどん描いて、いっぱい失敗して経験を積んでください。

『ひとなつのけいけん』kumanma
甘酸っぱい系のありがちな話ではあるけど、淡いエッチみたいなものをちゃんと描けてて良いと思います。女の子の表情も良い。でも、もっと冒険できるのではないかとも思いました。漫画の流れが単調なところで損をしています。

『無自覚に開発され発情体になったことを分からせる話』むむむか
ネットでありがちな、男に都合のいいエロマンガですね。でもしっかりとエロいから成り立っている。エロマンガには「そんなこたぁ実際ねーよ」って部分があるわけですが、だからこそエロマンガ。そこが読者に簡単にばれないようにできるともっと良くなる思います。

『本当のところ』吉田
エロでもないし、暗い話なんだけどベタの黒さがとてもかっこいい。絵のかっこよさで全然見せれる人です。何気ない系の話でもちゃんと漫画として成立させることができるだろうから、どんどん描いていってほしいです。

『ノスタルジーの種』日尾ねり
お話がちゃんと出来ていた分、何も起きなさすぎたのが残念でした。やはりお話のどこかで大きい裏切りが1個あると漫画として「読んだ!」という気持ちになれるので、この方の場合もそうなるとよいと思います。

『カーネーション・レッド』snowfish
とても暗い話でしたね。ありがちな話ではあるけど、絵がうまいし女の子はかわいくて、漫画として成立していました。良い意味で漫画を描き慣れてますね。お話作りはうまいけど、裏切りみたいなものもほしいです。

『葉子の日記。』川端あた
この方も自分の雰囲気をちゃんと持っていてそれを漫画に出来ています。ただ話運びが地味なので、どこかで転調する良いと思います。心の隅で「”裏切り”の瞬間が来るかも?」と思いながら描くとちょっと違うかもしれません。

見守り園長 
2ページの漫画を大量に投稿してきた人ですね。俺はこの人は見守りたいよ(笑)。人気の出そうなかわいい絵柄で、じつは今回唯一、絵を個人的にブックマークした人です。長編を描いたらもっとエロくなると思うので挑戦してみてほしい。題材は何でもいいし、お話が破綻したとしても描いてみるといいと思います。