INTERVIEW 010 水島精二さん
INTERVIEW 010 Feb.09.2017

水島精二さん (アニメーション監督)

アメリカンガールズロックユニット・PASSPO☆によるインタビュー連載企画! 第10回目のゲストは、アニメーション監督の水島精二さん。これまでに携わられた作品の制作裏話を交えながら、作品への譲れないこだわり、集中力を途切らせないための仕事術など……タメになるお話をたっぷりお届けします!

編集=原カントくん、岸野愛 撮影=川村将貴
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根岸 「一番の自信作というと?」

水島 「う?ん、今、皆さんに見てもらいたい映画という意味では、2年前に劇場公開した『楽園追放』かな。『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本を書いた虚淵玄くんと組んでいるんですけど、いわゆる日本の3Dアニメーションの分野では、多分トップクラスの出来で面白いです。アニメーションも手描きだと思って見られるぐらいのクオリティーを3DCGで作ったので、高い技術と物語の面白さの両方を1本で感じてもらえるはず」

根岸 「面白そう!」

「このキャラクターはこの声優さんでとか、そういうことも監督が指示するんですか?」

水島 「『楽園追放』の主人公の女の子・アンジェラは、シナリオ開発の時点で釘宮理恵さんにと決めていました。釘宮さんとは仕事を何回もやっていて、彼女の実力を分かっていたので。そのパートナー役となるキャラクターは三木眞一郎さんにお願いしました。三木さんもずっと一緒に仕事をしている頼れる役者さんです。で、フロンティアセッターっていうロボット役は、これまた仲のいい神谷浩史さんに。今、アジアで一番人気があるといわれていて、有名どころで言うと『進撃の巨人』のリヴァイ役とか。めちゃめちゃ人気のある役者さんですけど、その彼にわざわざ全然イケメンでも何でもない筒みたいなロボットの声をやってもらいました」

増井 「すごい!」

水島 「本当に彼の声はすごくクールで冷たくて、ちょっとフィルターを掛けるだけでめちゃめちゃ金属っぽい音になる。彼を口説いたときは、「人じゃないじゃないですか!」って言われましたけど(笑)。そんな感じで、『楽園追放』のキャスティングは、本当に最初から狙い撃ちでしたね。音響監督に『自分の考えているキャスティングでやらせてください』ってお願いして、全員自分で口説きました」

安斉 「声優さんは大御所の方でもまずはオーディションをするっていうのを聞いたことがあって。決め撃ちっていうのは珍しいほうなんですか?」

水島 「脇を固めてくれるキャストは指名することもあるのですが、メインになるキャストはオーディションで決めることが多いですね。オーディション後は監督一人で決めるわけじゃなくて、プロデューサーや音響監督などいろんな人が意見の出し合いをして決めていきます」

「みお(増井)が昔から声優をやってみたいと言っているので、もし機会があったら振ってあげてください!(笑)」

水島 「オーディション、呼びましょうか?(笑)」

PASSPO☆ 「えー!」

「すごくない!?」

水島 「オーディションに呼ぶだけならそんなにハードルは高くないので。そういうオーディションの現場で他の役者さんの演技を見ることも、それはそれで勉強になると思いますよ。それにしても声優に興味があるとは……。僕、『鋼の?』の小栗旬くんや『ガンダム』の勝地涼くんとか、わりと俳優さんを声優に起用することも多くて。結局、職業が何であれ、作品においてその人が効果的であると思えば、演技力だけではなく、その人のキャラクターで選ぶ場合も多いんです。演じる側は、声優が本業じゃないと大変だとは思いますけどね」

増井 「そうですよね」

水島 「ただ、それもやってみないと分からない。今も準備している作品があるので、声優をやってみたいということであればちょっと声を聞いてみたいです。もちろん、えこひいきはできないので平等に審査しますが、技術ではなくて、このキャラクターに合うじゃん、この子いいなってひらめいたときは、しっかり推しますので。それはどんな役者さんのときも同じです」

増井 「ドキドキします……。でも、本当にオーディション受けてみたいです!」

水島 「小説とか本をたくさん読んで、キャラクターがどういう心理なのかな、普段どういうことを考えている子なのかなっていっぱい想像を働かせるようにするといいと思いますよ。そうするとオーディションの台本を読んだときに、自分なりのプランが湧くと思う。……というのも、類型的ですごい分かりやすい演技をしてしまうと、(経験値を積んできた)声優さんに勝てないから。そのときに自分が得意だと思うものも無理やりはめてみたりとかしてもいいと思いますよ。あまり役に寄り添い過ぎると、同じような芝居の中に埋もれてしまうんです。その中でぽんってちょっと違ったことをやってくると、印象に残るし、別の作品やキャラクターで起用しようと僕らは思ったりするものなので。これはアドバイスです」

安斉 「すごくいいアドバイスです!」

水島 「でも、僕の知っている若い子たちにもこの話をしているんですけど、それで落ちていますからね(笑)。(頭ではわかっていても)なかなかやれないものなんですよね」